キャプシーヌ大通り (Le Boulevard des Capucines)
解像度: ★★★☆☆ おすすめ度: ★★★★★
クロード・モネ 1873年
W 292
キャンバスに油彩 61 x 80 cm
プーシキン美術館 モスクワ
ナポレオン3世によるパリの大改造によって生まれ変わろうとしているパリの都市景観を「現代性」をテーマに描かれた作品です。
本作はパリのオペラ座付近のキャプシーヌ通りを写真家ナダールのアトリエから俯瞰するという、当時としては斬新な構図で描かれています。
モネとナダールは画家と写真家という立場上、写真技術の普及で職を失う画家が続出する時代背景を考えると、対立関係にあってもおかしかくありませんが、親交があり、「第一回印象派展」もこのアトリエで開かれるほどでした。
気球の操作技術にも通じていたナダールは、パリで世界初の気球による空中撮影を行った人物でもあります。モネがこの俯瞰写真から何らかのインスピレーションを受けて本作を制作した可能性は十分考えられます。
画面右端には同じ建物の同じ階のバルコニー身を乗り出して大通りの様子を傍観する帽子を被った二人の紳士が描かれており、この絵を鑑賞するものが実際にその場に居るような錯覚を起こさせます。
また、画面左側の陽光に照らされ黄金色に輝く建物と並木と、右側の通りを行き交う人々の黒色との対比が作品の魅力を増幅させています。
「印象、日の出」を酷評したルイ・ルロワは本作に対しても、通りを行き交う人々を「無数の黒い涎」と揶揄していますし、また、ある批評家は「驚くべき習作あり、運動の瞬間なるものを描いた。」としながらも、「間近で見ると判読できない絵の具の削りかすの混沌だけが残る。」と、称賛とも批判とも取れる感想を述べています。
しかし、第一回印象派展は全体としては失敗という結果に終わりますが、この展示会を契機に時代は動き、ブルジョワ階級の台頭という時代背景も味方し、徐々に印象派の画家達は世間に認められるようになっていきます。
モネは、もう一つ、同時期に同じ作品名の縦長の作品を残しているので下記に示します。研究者によっては、こちらを第一回印象派展出品作と考えている人も居ます。
キャプシーヌ大通り (Le Boulevard des Capucines)
解像度: ★★★★★ おすすめ度: ★★★★★
クロード・モネ 1873年
W 293
キャンバスに油彩 80 x 60 cm
ネルソン・アトキンス美術館 カンザスシティ
また、ピサロも同じような俯瞰の近代的都市風景画の連作を1897年にホテル・ドゥ・ルーヴルの一室を数ヶ月間貸し切って、15作品残しています。
その中から、上記の縦長の作品と雰囲気がよく似た作品で私のお気に入りの作品があるので、下記に示します。
モンマルトル大通り、冬の朝 (Boulevard Montmartre Winter Morning)
カミーユ・ピサロ 1897年
キャンバスに油彩 65 x 81 cm
メトロポリタン美術館 ニューヨーク