カササギ (La Pie)
クロード・モネ 1869年
W 133
キャンバスに油彩 89 x 130 cm
オルセー美術館 パリ
本作の作品名は「カササギ」とされていますが、「陽光を浴びた、まばゆい銀世界をいかに表現するか。」に主題はあります。
まず視線が行くのが、柵の木戸に止まっているカササギです。冬の凛とした雰囲気を表現するのに一役買っています。そしてカササギの背後に描かれた海や対岸と思われる遠景が一見平面的に感じられる絵に空間的な広がりを与えています。
そして、最も注目に値するのは、柵や木々に降り積もった雪の風合いを大胆な筆致を用い、見事に表現している点にあると思います。
モネは本作を制作している時期、経済的に困窮していました。妻と幼子を養わなければならない立場でありながら、サロンの保守的な審査員に受けの良い伝統的な手法ではなく、自分の信じる革新的な手法でこの絵を描きサロンに出品しましたが、落選してしまいます。
支える妻の気苦労や幼子のことをを思うと胸が痛みますが、これぐらいの無鉄砲な頑固さがなければ、歴史に名を刻むような人物には成れないのでしょう。
当時、西洋画では、雪景色はあまり描かれていませんでしたが、東洋では水墨画の技法を用い、余白をうまく雪に見立てた山水画が描かれていました。
例として雪舟の秋冬山水図(冬景図)を下記に示します。
秋冬山水図(冬景図)
雪舟筆 15世紀末~16世紀初
紙本墨画 30.2 x 47.7 cm
東京国立博物館
モネの曲線的で温かい雪景色とは対称的に、雪舟のそれは、大きくデフォルメが成され、鋭角的で厳寒を思わせます。