マネの「草上の昼食」は、絵画の背景や人の配置は、実在する古典的な作品を参考にして描いています。しかし、二人の男性は正装をしているのに対し、一人の女性だけを裸で描いたことから、当時のサロンに一大スキャンダルを巻き起こしました。
それまでの西洋絵画においては、神話や歴史上の出来事を描いたものに対しては、それがどんなにエロチックなものであっても受け入れられてきました。
しかし、現実の女性の裸体を、しかもそれが強調されるようなシチュエーションで描いたマネの作品は画期的ではありますが、大きな批判の的ともなりました。
草上の昼食 (Le Dejeuner sur l'herbe)
エドゥアール・マネ 1862-63年
キャンバスに油彩 208 × 265.5 cm
オルセー美術館 パリ
しかし、私が面白く凄いと思うのは、スキャンダラスな側面よりも、モネなどの新鋭の画家たちが、それぞれの感性でマネのこの作品を解釈し、オマージュしたり 、対抗的とも解釈できる作品を残していることです。
モネの場合は、この絵をヒントに、ピクニックで昼食を楽しむ紳士、淑女を、アトリエで描くのではなく、戸外で制作し、外光の効果をうまく利用することにより、先進性を表現しようとしています。
歩く人(習作) (Les Promeneurs)
解像度: ★★★☆☆ おすすめ度: ★★★☆☆
クロード・モネ 1865年
W 61
キャンバスに油彩 93 x 69 cm
ナショナル・ギャラリー ワシントン
草上の昼食(習作)(Le Dejeuner sur l'herbe)
解像度: ★★☆☆☆ おすすめ度: ★★★★☆
クロード・モネ 1865年
W 62
キャンバスに油彩 130 x 181 cm
プーシキン美術館 モスクワ
草上の昼食(サロン出品用) (Le Dejeuner sur l'herbe)
解像度: ★★☆☆☆ おすすめ度: ★★★☆☆
クロード・モネ 1865年
W 63
キャンバスに油彩 460 x 600 cm
オルセー美術館 パリ
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サロン出品用の草上の昼食は 、サイズが大きいこともあり、目標としていたサロンの期日までに制作が間に合わなかったこと、クールベから批判を受けたこともあって、結局サロンに出品されませんでした。
また、当初マネの手元にあったこの作品は、家賃代として大家に取られてしまい、数年後取り戻した際には損傷が激しく、上記の左側部分と中央部分以外は取り除かれてしまいました。個人的に、とても残念です。
マネの「草上の昼食」は1963年の完成当初は「水浴」という題名でしたが、1967年にモネの作品を意識して自ら改題しました。私にはどちらの題名も絵の内容に、マッチしていないように思います。