日傘の女 (La Femme a l'ombrelle)
解像度: ★★★★★ おすすめ度: ★★★★★
クロード・モネ 1875年
W 381
キャンバスに油彩 55 x 66 cm
ナショナル・ギャラリー ワシントン
数あるモネの作品の中でも知名度、人気ともにトップクラスの作品です。 アルジャントゥイユの草原で、妻カミーユと息子ジャンをモチーフに制作されています。
この絵が制作された時期は、人気が出始めてパトロンもつき、今までの貧困生活からやっと妻を開放させることができ、公私共に、モネの人生の中で最良の時期だと言われています。
本作は、鑑賞者がモチーフを見上げる空間配置で描かれています。逆光の効果と風になびくベールによって、おぼろげにしかカミーユの顔が見えません。また、空と雲が気品ある白い衣装と渾然一体となって幻想的な雰囲気を醸し出しています。
退屈そうなジャンも可愛く、草原の草花の暖色と人影も効果的に作品を演出しています。心地良い風と日差しの下、幸せな家族が草原を散歩する途上、夫妻が幸せそうに見つめ合う光景が目に浮かぶようです。
下記に本作と関連のある2作品を紹介します。
戸外の人物習作、右向きの日傘の女 (Essai de figure en plein air, dit Femme a l'ombrelle toumee vers la gauche)
解像度: ★★★★☆ おすすめ度: ★★★★★
クロード・モネ 1886年
W 1077
キャンバスに油彩 131 x 88 cm
オルセー美術館 パリ
この作品はジヴェルニー近郊のオルティエ島の土手において、オシュデ夫妻の三女で、当時18歳だったシュザンヌ・オシュデをモデルに制作されました。
衣服とベール、土手の草花は、やや強めの風になびいていますが、陽光を浴び、シュザンヌはとても気持ちが良さそうです。
戸外の人物習作、左向きの日傘の女 (Essai de figure en plein air, dit Femme a l'ombrelle toumee vers la droite)
解像度: ★★★★★ おすすめ度: ★★★★★
クロード・モネ 1886年
W 1077
キャンバスに油彩 131 x 88 cm
オルセー美術館 パリ
上記の「右向きの日傘の女」と対の作品として制作された本作は 、カミーユをモデルとし描かれた上記の「日傘の女」と構図、服装が酷似しています。
また、モデルの腰に飾られた「ひなげし」のコサージュ、顔がベールに覆われ目鼻立ちが描かれていないことも、「7年前に亡くなった妻カミーユに対するモネの悔恨が本作に反映されているのではないか。」という連想を抱かせます。
「風景と人物との融合を試作して意図的に顔に筆を入れなかったのか。」「カミーユへの深い想いから筆が止まってしまったのか。」どちらなのでしょうか?
私は後者だと思います。