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2013年2月8日金曜日

映画「モネ・ゲーム」(アメリカに偏在する名画「積みわら」)


ジョエル&イーサン・コーエンが脚本を手がけ、コリン・ファースとキャメロン・ディアスが初共演した「GAMBIT(ギャンビット)」の邦題が「モネ・ゲーム」に決定し、5月17日から公開されることになった。
引用 映画.comニュース 2013/02/06 19:10

この映画の内容はモネの名画「積みわら」の贋作で詐欺を目論む男女のコンビの奮闘をコメディタッチで描いたものです。

名画「積みわら」といっても少なくとも「積みわらの連作」と呼ばれる作品群は30作品にも上るので、「どの作品の贋作を扱っているのか、それともこの映画上だけに存在する架空の作品を用いているのか。」興味があったので調べてみました。


下記にYouTubeから公式の予告編を示します。再生時間0:47付近に贋作が登場します。





奇しくも、私が「積みわらの連作」の中で一番好きな作品のだったので、一目で分かりました。下記に示すのがその作品です。再掲
 

積みわら、夏の終わり、夕方の趣 (Meules, fin de l'ete, effet du soir)

出典 www.flickr.com  オリジナル(1320×787, 291 KB) ※ 2013/02/08 更新

クロード・モネ 1890年
W 1269
キャンバスに油彩 60 x 100 cm
シカゴ美術館


今回のハリウッド映画でモネの「積みわら」が取り上げられたのは偶然ではないかもしれません。今回の映画で取り上げられた「積みわら、夏の終わり、夕方の趣」の他にもシカゴ美術館は5点もの「積みわら」の絵を所蔵しており、計6点所蔵しています。

またアメリカのその他の美術館では、ヒルステッド美術館が3点、シカゴ美術館が2点、J.ポール・ゲティ美術館、メトロポリタン美術館、ミネアポリス美術館がそれぞれ1点所蔵しており、アメリカの美術館に14点もの「積みわら」の絵が偏在していることになります。

個人収蔵の作品を考慮すると「積みわらの連作」30作品のうち、過半数以上がアメリカにあると推測されます。

これは、デュラン=リュエルという印象派の画家の絵を早い時期から積極的に購入した画商に依るところが大きいと思われます。19世紀後半になるまで印象派の画家の革新的な絵は一部の人達にしか受け入れられず、日陰者扱いされていました。

しかし、この画商はいち早く印象派の画家の絵の価値を認識し、鉄道によって莫大な資産を得たアメリカ人を顧客の対象にすることを画策します。モネは初めは難色を示していましたが、結局、最終的には作品の制作現場にまで顧客を呼び、作品の完成を待たずして商談を進めるというようなことまでやっています。

当時、富が有り、新しい様式に対して寛容だったアメリカで、母国フランスに先んじてモネの絵が評価され「積みわら」の絵が集まって行ったのは、ある意味必然だったのかもしれません。

また、この映画の脚本家のコーエン兄弟の母親は大学で美術史を教えていたそうなので、何か「積みわら」を題材にすることに関して助言があったのかもしれません。