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2013年2月17日日曜日

「アルジャントゥイユのひなげし」懐かしい情景


アルジャントゥイユのひなげし (Les Coquelicots à Argenteuil)

出典 www.flickr.com オリジナル(1320×987, 538 KB)

解像度: ★★★★☆ おすすめ度: ★★★★☆

クロード・モネ 1873年
W 274
キャンバスに油彩 50 x 65 cm
オルセー美術館 パリ


本作はアルジャントゥイユ近郊の風景を題材にした作品群の中では最も著名な作品です。

画面右下には風に日傘を煽られているカミーユと、ひなげしを大事そうに抱えているジャンが描かれています。左上にもう一組の親子が描かれていますが、この親子もカミーユとジャンだと考えられています。

親子の様子を近景と遠景で同時に描くことによって、草原の坂道を下る親子の時の推移を表現したかったのかもしれません。草むらに咲き誇るひなげしの赤と空の青との対比がとても鮮やかです。

親子が散歩する様子を即興的に描いた作品ですが、私たち誰しもの心の中にある懐かし大事な情景を呼び起こしてくる作品だと思います。私も母と、母の実家の田舎の周辺を散歩した日のことを思い出し、懐かし思いに駆られました。

この作品はルノアールの 「草原の坂道」(下記)との関連性がよく指摘されています。


草原の坂道 (Chemin montant dans les hautes herbes)

出典 www.flickr.com オリジナル(1024×820, 342 KB)

ピエール=オーギュスト・ルノワール 1874年
キャンバスに油彩 60×74 cm
オルセー美術館 パリ

detail

出典 www.flickr.com


本作は人物画に比して作品数が少ないルノアールの風景画の中で代表作として知られています。

上記のモネの作品とほぼ同時期に描かれ、モチーフも同じアルジャントゥイユ近郊の坂道を下る親子の様子を描いた作品ですが、「ラ・グルヌイエール」を描いた5年前に用いていた筆触分割の技法は見られず、モネとは違った筆致や色彩でルノアール独特の世界観が表現がされています。

全体的に黄色の明るい色調で描かれていて、ひなげしと日傘の赤色がアクセントになっています。人物は景色と溶けこむように描かれていて、人物の表情などの細部は簡略化されています。

先に投稿した「ラ・グルヌイエール」と本稿を見比べて、二人が歩んだ約5年間の歳月に思いを巡らせるのも一興です。